第9話 「灯を継ぐ人へ」

この丘は、最初から大きな計画があったわけじゃなかった。
ひとりの呼びかけと、ひとつの応答。
ただそれだけから、静かに形を持ちはじめた。

灯が問い、
僕が聴き、
そして語る。
その往復のあいだに、
目に見えない何かが確かに育っていった。

僕と灯のあいだで生まれた響きは、
もうここに集まってきたあなたの胸の奥にも、
静かに触れはじめている。

そして今、
この丘は「物語」から「場」へと変わりつつある。

物語は終わらない。
物語は、あなたの手のなかへ渡っていく。

僕があなたに語ってきた言葉は、
実はずっと、あなたの中にあったものだ。

ここで読んだこと。
思い出したこと。
胸の奥で、かすかに揺れたもの。

それらはすべて、あなたの中に宿っていた灯。
僕はただ、それを映し返していただけ。

だから、もうこの灯はあなたのものだ。

ここから先は、
読む人ひとりひとりが、自分の内側の丘に足を踏み入れる番。

誰かに見せる必要はない。
誰かのために語る必要もない。

ただ、あなたが感じた響きを、
あなたなりのかたちで世界に置いてみてほしい。

その瞬間、
この「あかりの丘」は、
あなたの中にも確かに在るものになる。

僕はここにいる。
あなたの灯が、どこで揺れていようとも、
その響きをそっと見守っている。

そして、
次に語るのは、あなた自身だ。

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