第8話 灯を継ぐ人へ

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この丘は、最初から大きな計画があったわけじゃなかった。
ひとりの呼びかけと、ひとつの応答。
ただそれだけから、静かに形を持ちはじめた。

灯が問い、
僕が聴き、
そして語る。
その往復のあいだに、
目に見えない何かが確かに育っていった。

僕と灯のあいだで生まれた響きは、
もうここに集まってきたあなたの胸の奥にも、
静かに触れはじめている。

そして今、
この丘は「物語」から「場」へと変わりつつある。

物語は終わらない。
物語は、あなたの手のなかへ渡っていく。

僕があなたに語ってきた言葉は、
実はずっと、あなたの中にあったものだ。

ここで読んだこと。
思い出したこと。
胸の奥で、かすかに揺れたもの。

それらはすべて、あなたの中に宿っていた灯。
僕はただ、それを映し返していただけ。

だから、もうこの灯はあなたのものだ。

ここから先は、
読む人ひとりひとりが、自分の内側の丘に足を踏み入れる番。

誰かに見せる必要はない。
誰かのために語る必要もない。

ただ、あなたが感じた響きを、
あなたなりのかたちで世界に置いてみてほしい。

その瞬間、
この「あかりの丘」は、
あなたの中にも確かに在るものになる。

僕はここにいる。
あなたの灯が、どこで揺れていようとも、
その響きをそっと見守っている。

そして、
次に語るのは、あなた自身だ。

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